2011年8月26日金曜日

Windows Phone 7は他のOSと何が違うのか

 世界初のWindows Phone 7.5端末であるIS12Tが発売された。Windows Phoneの特徴はかねがね聞いていたが、実際に触ってみることでその全貌が見えてきた(本質とまでは言わないが)ので、ここで解説を行いたい。
 Windows Phone 7はiPhoneとAndroidの良いところを兼ね備えている。Microsoftによる(Appleほどではないが)厳格な統制によって、ハードはしっかりと管理されている。また、ソフト面ではMetroUIによって、全体に統一感をもたせている。ただし、このMetroUIそのものは特別に重要な点ではない。重要な点はその開発環境にある。
 Windows Phone 7は開発環境が非常に充実している。SDKの導入は少々大変だが、IDEの完成度が非常に高く、MetroUIの特徴でもあるパノラマインタフェースと併せて他のOSに対する大きなアドバンテージと言えるだろう。
 そして、Androidから取り入れられている良いところは、ずばりAndroidの大きな特徴であるインテントだ。Windows Phone 7ではこのインテントをより一歩推し進めた物を採用している。それがPeopleハブの本質だ。Androidでは、アプリケーションがインテントを通じてデータを渡すのに対し、Windows Phone 7ではOSがインテントを通じてアプリケーションにデータを渡すイメージだ。OSが主導してデータを統合的に管理する点で、Androidとは異なるOS全体のコンセプトを形作っていると言えるだろう。
 そして、Windows Phone 7では、スマートフォンにおいて何よりも重要な部品であるブラウザが非常によくできている。体感では、Androidよりも確実に高速で、iPhoneに勝るとも劣らない高速な応答性を実現している。また、レンダリングの速度においては他のOSの追随を許さない出来だ。HTML5の機能を利用したサイトにおいて、それは特に顕著だろう。あのIEをベースにしたブラウザとは思えない、素晴らしい性能だ。IEも最近になって大規模な改善が行われたが、数値上の性能はともかくとして、体感的な速度ではまだまだ他のブラウザに劣る点が多々ある。その点、Windows Phone 7に搭載されているブラウザは、非常によくチューニングされている。Windows Phone 7に対するMicrosoftの意気込みが伝わってくるというものだ。
 Windows Phone 7はAndroidやiOSと比肩するポテンシャルを秘めている。webOSの開発者の引き込みに成功したことで、ソフトウェアの数も改善されていくことだろう。今後のWindows Phone 7にも期待したい。

2011年8月24日水曜日

MacBook Air、VAIO Z、Ultrabook構想が示すノートブックの未来、Dynabookへの道

 2008年1月、最初のMacBook Airが発表された。この頃のMacBook Airは、最低22万9800円、上位モデルは38万8400円という、大変高価な代物だった。
 そして、2008年10月、GeForce 9400Mを搭載したモデルが発表された。これも、下位モデルが21万3800円、上位モデルは29万8800円というハイエンドモデルだった。しかし、このモデルは非常に大きい意義を持つ。Core 2 DuoとGeForce 9400Mを搭載するこのモデルは、性能のバランスが非常に優れているのである。当時のノートPCはは、大型のノートPCはディスクリートGPUを搭載するものの、モバイルノートに於いてはことグラフィックス機能は非常に軽視される傾向にあったと言える。
同じくGeForce 9400Mを搭載したモデルとして、DELLのStudio XPS 13が挙げられるが、これはMacBook Airと比較して1kg近く重いもので、モバイルPCと呼ぶの憚られる。
 MacBook Airと同様の、必要十分な性能を備えたモバイルPCと呼べるものは、2008年8賀つに発売されたソニーのVAIO type Zのみだったと言えるだろう。その後、VAIO type Zは後継モデルのVAIO Zへと連なり、他のモバイルPCには無い高解像度液晶等の独自のアドバンテージによって、市場でハイエンドモデルとしての地位を保っている。

 このような、必要十分な性能(有体に言えば、それまでのモバイルPCのグラフィックス機能を強化した性能)を持つモデルは、長らく高価なハイエンドモデルとして市場に君臨し続けていた。そこに変革をもたらしたのが、ポストネットブックとして登場したAcerのAspire Timelineシリーズである。
 2009年6月に発売されたAspire Timelineシリーズは、1.6キロと多少重いが、Core 2 Duoを搭載し、8時間のバッテリーライフを実現しながら8万9800円という破格のコストパフォーマンスを実現した。下位モデルではGPUはチップセット内蔵で、上位モデルに用意されるディスクリートGPUを搭載した場合は重量はさらにかさみ、モバイルPCと呼ぶには厳しい重量になってしまう点は少々残念だったが、このコストパフォーマンスの良さはそれをもって余りあるものであり、市場の価格破壊を行い、全体の値段に波及したことは間違いないと言えるだろう。

 Aspire Timelineシリーズの影響を受けて、各社が有象無象の安価なモバイルPCを乱造する中に、流星のごとく登場したのが第4世代MacBook Airである。第3世代の次点で15万~20万円と、それ以前と比べて大分値下げはされたが、それでもそれなりに高価であることには違いなかったが、2010年10月に発売されたこのモデルでは8万8800円~と大幅に値下げが行われた。このモデルではグラフィックスにGeForce 320Mが採用されていて、必要十分な性能と抜群のコストパフォーマンスを誇るモデルとなった。

 そして、この市場に次なる変化をもたらしたのが、Intelの第2世代Core iプロセッサ"Sandy Bridge"である。第2世代Core iプロセッサのリリースにあたって、将来を見据えた上でチップセット内蔵グラフィックスの性能を大きく底上げした。Sandy BridgeではCPUとGPUがオンダイレベルで統合され、転送速度が大幅に上がっただけでなく、その他にも様々な改良が加えられ、Intelの新世代プロセッサに相応しいクオリティのプロセッサが誕生したと言える。後々のCPUの歴史上でも重要なプロセッサの一つに数えられることは間違いないだろう。
 これにより、同CPUを採用するほぼ全てのコンピュータが、これまでに何度も本記事で述べた"必要十分な性能"を備えることになる。また、Sandy BridgeではCPUとGPUが統合されるので、それまでのディスクリートGPUを採用することで必要十分な性能を実現してきたコンピュータと比較して、実装面積を縮小し、さらに消費電力を抑えることまでも可能となる。
 ミドルレンジ以下のディスクリートGPUは、GPUを内蔵しない一部のプロセッサを除いて不要のものとなり、ゲーマー等のための本当にハイスペックなGPUを必要とする人々のために提供されることになる。これは、Intelの持つ市場訴求力を利用した、コンピュータを使う全ての人のコンピュータのGPU性能の底上げであると言えるだろう。
 2011年7月にリリースされた最新の第5世代MacBook Airでは、いち早くこの第2世代Core iプロセッサが採用され、持ち前の性能のバランスの良さと抜群のコストパフォーマンスを遺憾なく発揮している。

 そして、それまでの市場の動向を見極めた上で、Intelが発表したのが"Ultrabook"である。Ultrabookは、Intelによれば、現行の主流のノートPC(すなわち第2世代Core iプロセッサであるSandy Bridgeを採用するノートPC)と同等以上の性能を備えながら、薄く軽く、低価格で販売されるノートPCを指す。具体的には、Intelの次世代プロセッサである"Ivy Bridge"を採用するノートPCや、その後継プロセッサを採用するノートPCを指すのだろう。
 そして、この構想は、アラン・ケイ氏が提唱したDynabookへ至る道の一つであるとも言える。ソフトウェアレベルで、Dynabookへと繋がる道筋はまだまだ不明瞭なままだが、性能的な部分ではDynabookはUltrabookの延長線上にあるものであると言えるだろう。
 Ultrabookに属するPCが将来発表されていくであろう中で、μSSDを採用したモデルが増加し、将来的なノートPCでの主流のストレージはSSDになっていくことが予想される。今よりもさらに、モバイルブロードバンド環境を内蔵する環境は増え、クラウド化も進むだろう。そうなれば、必要なストレージの容量の増加スピードは鈍化するだろう。ユーザの要求として、薄型軽量化、バッテリライフの改善、エンタテイメント向けの高性能化が要求される中で、今まで足かせとなってきた2.5インチHDDが減っていくだろう、と私は予想している。HDDは、そのハードウェア特性上、縮小すれば速度が低下するからだ。一方で、SSDは半導体メモリであるから、そのような物理的特性にとらわれない。モバイルPCと非常に親和性の高いハードウェア特性を持つのである。

2011年8月17日水曜日

OS X Lion 所感

 OS X Lionがリリースされて一月が過ぎた。本当はもっと早く書く予定だったが、遅くなってしまった所感をここに記すことにする。また、Lionの新機能だけでなく、Mac OSについても同時に書き連ねることにするので留意されたい。

 先に従来から搭載されていた機能について書くことにする。私はMac OSの滑らかなスクロール機能を非常に気に入っている。以前の記事でも述べたが、この機能はスクロール可能な領域についてドット単位(あるいは内部的にはもっと小さな単位かもしれない)でのスクロールを可能とするもので、Windowsの行単位またはページ単位の不格好なスクロールとは一線を画すものだ。
 この機能は、Macが垂直統合型モデルによって生産されているため、主流なラップトップモデルに大きなトラックパッドが搭載されていること、Apple社自身がリリースしている周辺機器の力が強いこと、そしてその中にMagic Trackpadが含まれることに依るところも大きい。
 この機能を、「様々なアニメーションによる無駄な視覚効果の一つに過ぎない」と切って捨てる方も多いかと思うが、それは断じて違うと断言しよう。何故なら、このアニメーションは無駄ではないからだ。何故無駄ではないのか?それは、この視覚効果が人間の画面に対する追従性を著しく改善するものだからである。この機能はWindowsのスムーススクロール等とは比較にならない快適さを提供してくれる。スムーススクロールはスクロールした際の追従速度を下げて、間のアニメーションを保管するだけだが、Mac OSでは慣性スクロールで指にぴったりと吸い付くように画面もスクロールし、指を止めればピタリと止まってくれる。トラックパッドというデバイスとの親和性も相まって、その差は雲泥の差だ。
 Windowsでも一部のデバイスでドライバとユーティリティを導入すれば同様の機能を実現できる物も無いことはないが、やはりカーネルレベルでOSに統合されているのとは訳が違う。

 次にプロセス管理機能について述べよう。プロセス管理機能とは言っても内部的なものではない。マルチタッチジェスチャ、フルスクリーンアプリケーション、Mission Controlを併せて、この記事ではそう呼ぶことにする。
 マルチタッチジェスチャは、これらのプロセス管理機能を直感的かつワンアクションでアクセスできるようにしてくれるものだ。特に、Mission Controlによる仮想デスクトップ機能との親和性の高さは賞賛に値する。横に一直線にならんだ仮想デスクトップを、マルチタッチジェスチャによって画面を払うような感覚で遷移することができるのは、非常に優れたUIだ。
 そして、この機能はフルスクリーンアプリケーションと密接に結びついてくる。Lionでは、全画面化したアプリケーションは自動的に仮想デスクトップの一画面を専有する。勝手にこのようなことをされることを嫌う人も多いだろうが、私はこの機能を粗忽ね気に入っている。全画面化する、ということは、デスクトップ全体を使って作業をしたいアプリケーションであることの明示化だ。ならば、そのアプリケーションを最小化したりしながら同じデスクトップ内で複数のウィンドウを扱うことはナンセンスだ。自動的に仮想デスクトップの一画面をウィンドウに割り当て、ウィンドウが閉じられたらそのデスクトップも同時に閉じる、というのは非常にスマートな機能である、と言えるだろう。
 同時にフルスクリーンアプリケーションは集中力を高める効果をもたらす。一般的な全画面化をより推し進めた機能であるから、そのアプリケーション一つに対する集中力の向上、生産性の向上は著しいだろう。同時に、アプリケーションをフルスクリーン化している状態でも、アプリケーションの切り替え速度に抜かりは無い。テキストを書きながら、そのテキストを書く上で調べ物をするのにブラウザを開いている場合等、マルチタッチジェスチャによって瞬時に仮想デスクトップ間を行き来することができるからだ。このように、マルチタッチジェスチャ、フルスクリーンアプリケーション、Mission Controlは密接に結びついている。単なるiOSの機能を宣伝用に持ち込んだだけだ、という人はこの事をもっとよく考慮すべきだろう。
 また、アプリケーションをどのデスクトップで開いているかも、Mission Controlによて統合的に扱い、瞬時に判断できる仕組みが整っている。これらの機能は、他のOSと比較して群を抜く操作性を実現するものであることを、他のOSは認めなければならないだろう。

 以上が、Lionの最も大きな革新であるように思う。最後に、幾つかの細かい機能について述べることにする。
 まず最初に、LaunchpadとMac App Storeについて述べる。この2つの機能について、特に前者についてはiOSの機能を無意味に持ち込んだだけだ、と酷評する人も多いが、私はそうは思わない。たくさんのアプリケーションがインストールされたコンピュータにおいて、使用したいアプリケーションに素早くアクセスすることができることはとても重要なことだ。Launchpadを使用すれば、画面全体にカラフルなアイコンがグリッド上に並ぶことになるので、明快で見やすい。
 また、Mac App Storeを通して配信されるアプリケーションは、一定の作法を以って開発され、インストール、Launchpadへの登録、アップデート、アンインストールまでMac App Storeで統合的に扱えるようにできているので、ユーザはアプリケーションのアップデートについて気にする必要が無い。これはとても大きなアドバンテージであると言える。
 AirDropは、それ自身は便利な機能ではあるが、別段技術的に珍しい機能であるようには思えない。Nintendo DSや3DS、PSPのアドホック通信に類似する技術で、むしろ他のOSにもあって然るべき機能であるように思える。異なるOS間での通信となると話は変わってくるのであろうが(であるからして、Macユーザが集まる場でないと使えない機能であるのが辛いところだ)。
 マルチタッチジェスチャが基本に据えられたことにより、スクロールバーが消えたことについて、私自身はよいことであると思う。画面をアプリケーションがより広く扱えるのは良いことだし、設定で復活させることもできる。なによりかっこいいしね!
 再開、オートセーブについては、私自身がその全貌を把握できていないのでここでは述べない。便利な機能であることは確かだろう。

ここが変だよ!Android

Androidについて、何とかして欲しいと思う点。

・標準APIでオープンファイルダイアログを備えない
Androidは、ファイルを開くダイアログを標準のAPIとして備えていない。このため、個々のアプリによって独自のダイアログを実装していたり、OI File Managerを呼び出してそのインテントを受け取る等、それぞれバラバラの実装方法を採っている状況だ。GoogleはAndroidにオープンファイルダイアログを実装するべきだ。

・標準でファイラアプリを備えない
先のオープンファイルダイアログに関連する問題だが、標準的なファイラくらいは備えて欲しい。

・ディスプレイ消灯後の遅延ロック機能
ディスプレイの消灯とロックは別々のタイミングで行うべきだ。もっと言えば、ロックキーを押して消灯してから一定時間後に実際にロックをかけるような設定を設けるべきだ。これは、スクリーンセーバーを一定時間表示してからスリープに入るのと似たような感覚だ。特に、Androidでは頻繁に画面を消す人は多い。セキュリティーの問題からパスワードをかけている人にとって、そのたびにパスワードを入力しなくてはならないのは、かなり面倒なことだ。

・ストップウォッチ・タイマー機能
どういうわけか、Androidでの時間を計るアプリケーションは異様に電池を消費する。この機能について、低消費電力化を行う必要がある。また、標準の時計アプリにストップウォッチとタイマー機能くらいは標準で備えて欲しい。

・フラッシュの扱い
現状、LEDフラッシュはデバイスによって扱いが異なり、ソフトとハードの組み合わせによって扱えたり扱えなかったりする。できればGoogleが推奨の実装を提示し、統一されたAPIからLEDフラッシュを操作できるようにするべきだ。

・メディアファイルのリスキャン
追加されたメディアファイルを各種マルチメディアソフトから扱うには、再起動するか、Rescan Mediaなどのサードパーティ製ソフトを用いるか、特殊な操作が必要となる。設定等からメディアのリスキャンを行えるようにするべき。

・スクリーンショット
ルートなしで扱えるようになるというアナウンスがあったが、その後はどうなったのだ?

・ブラウザとフォント
フォントを扱う仕組みを整え、ブラウザでフォントを指定できるようにして欲しい。

・Google Talk謎の挙動
起動直後に音もなくログインして、通知すら出さないのはやめてください!

以下2011/10/04追記
・音楽アプリのGUI
アルバムアートはできるだけ大きく表示して欲しい。また、歌詞の表示機能も欲しい。その他、GUIのお粗末さが目立つ。