2012年10月18日木曜日

Google Dart対Microsoft TypeScriptという構図の意味

 TechCrunch Japan記事でも述べられているが、どうやらGoogleはやはりDartに対してかなり本気らしい。それもその筈、GoogleにとってDartが極めて重要なプロダクトであることは疑う余地が無い。それは何故か?

 それはDartがGoogleにとって次代のプラットフォーム戦争における覇権を握るための極めて重要な切り札であるからに他ならない。
 以前から私が常々言っていることではあるが、現在行われているAndroid対iOS(+その他大勢)の構図によるプラットフォーム戦争は、その実体を徐々にウェブ上に移していく筈だ。Facebookはパフォーマンスの問題から同社のアプリケーションにおけるHTML5の利用を中止したが、これはつまり「パフォーマンス(と生産性)の問題さえ解決すればHTML5を採用する」ということに他ならない。実際にはこの他にも、各々のプラットフォーム間での挙動や実装、作法の違いからくる不調和等の細かな問題は山積みであるが、それも徐々に解決していくだろう。ゲーム等の非常にリッチなコンテンツをウェブというプラットフォームで動かすのは当分先になるかも知れないが、そうでないアプリケーションの主流がウェブに移っていくのは時間の問題だ。多くのアナリスト達は現在のようなOSは徐々に息を潜め、プラットフォームの主役はブラウザになると分析する。その次に言うことはこうだ。「今はまだ早い」。

 MicrosoftのTypeScriptやGoogleのDartは、このブラウザ上でのプラットフォーム戦争を担う次代のプラットフォームである、ということだ。現在のHTML5が抱える主な問題、「パフォーマンス」「生産性」「仕様の乱立」の3つを全て解決するために両社が尽力している事は、そのプラットフォームの性質から明らかだ。言語としての機能の充実だけでなく、エディタまで提供している事がそれを裏付けている。
 GoogleがChromeの普及に対して殆ど異常とも言えるほど執着していることも、これを更に裏付けている。現在のChromeブラウザにはまだDart VMが搭載されていないが、Windows、Android、Mac OS、Linuxの全てのChromeに大してDart VMが搭載されれば、Dartは一躍巨大プラットフォームへと変貌する。Chrome以外のブラウザに対してはJavaScriptとして提供すればよいし、Chrome上ではネイティブアプリと見紛う程の速度で動くとなれば、同社のシェアは一気に加速するだろう。更に言えば、優れたVMとエディタが合わされば、Android上でのアプリケーション開発における生産性の低さも同時に解決する。

 とは言え、どのプラットフォームがこの次代のプラットフォーム戦争における勝者となるかはまだまだ未知数だ。先行開発したプラットフォームが結局頓挫するケースは数え上げればきりが無いし、後出しで漁夫の利を狙ったプラットフォームが勝利することもあれば結局先行するプラットフォームに追いつけずに負けるケースもある。今後も各々のプラットフォームの動向を注視していきたい。

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